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ササナミノ サクラモヨシト
ササナミの桜もよいものだと言って
【ササナミ】 琵琶湖にそそぐ安曇川の南に高島という地名がある。その辺りに「ササナミ」という所があったのだろうか。
オリカザシ クマノヨロギノ
今度は桜の枝を折り、髪に飾った。クマノと万木野に
【クマノヨロギノ】 滋賀県高島市の湖西線安曇川駅周辺に「西万木」という地名が残っているので、その辺りかと思われる。「クマノ」については不明。
24-106 タニセント オオタミシマガ
田を拓こうとオオタとミシマに
24-107 イガワナス オトタマガワノ
井堰を築かせ、川を掘らせた。オトタマ川の
24-108 シラスナニ ヒルネシテオル
白砂の道に昼寝をしている
チマタカミ ミノタケソナタ
見知らぬ男がいた。身の丈十七咫ほどで、
【チマタカミ】 広辞苑には「道の分岐点を守って、邪霊の侵入を阻止する神」とあるが、物部達も恐れたというのであるから、ここではそのような存在ではない。正体不明な男というくらいの意味であろう。
24-110 ツラカガチ ハナタカサナキ
顔はホオズキのように赤く、鼻の高さは七寸(キ)ほど、
24-111 メハカガミ トモノヤソカミ
目は鏡のようだった。供に付いていた八十人の物部達が
24-112 オソルレハ ミマコウスメニ
恐れたので、ニニキネがアメノウスメに
ミコトノリ ナンチメカチニ
命じた。「汝、女の色気で
【メカチ】 難解な言葉であるが、この後のウズメの行動から、「見目勝ち」すなわち美貌、または「女(メ)勝ち」すなわち、女としての色気を前面に出すことではないか。
24-114 トフヘシト ウスメムネアケ
何者か聞いてまいれ」アメノウスメは胸をはだけて
24-115 モヒボサゲ アザワライユク
裳の紐を下げて、声をたてて笑いながら近づいていった。
24-116 チマタカミ サメテカクスル
見知らぬ男は目を覚まして、「そのようなことをするのは
24-117 ナニユヱヤ イワクミマゴノ
なぜか」と聞いた。アメノウスメは言った。「皇孫が
24-118 ミユキサキ カクイルハタソ
お通りになる先に、このようにしている汝こそ誰なのですか」
24-119 コタエイフ カミノミマコノ
男が答えた。「アマテルカミの御孫が
24-120 ミユキナス ウカワカリヤニ
お出でになるので、鵜川の仮宮で
24-121 ミアエシテ アヒマツナガタ
宴でおもてなしをしようと、お待ちしていたナガタの
24-122 サルタヒコ ウスメマタトフ
サルタヒコでございます」アメノウスメがまた尋ねた。
24-123 イツレカラ ユクヤコタエテ
「どの道を行けばよいのですか」サルタヒコが答えて
24-124 ワレユカン マタトフナンチ
「我がご案内しましょう」と言った。更に「汝は
24-125 シルヤキミ イキマストコオ
我が君が行かれる所を御存じなのですか」と聞くと
24-126 コタエイフ キミハツクシノ
サルタヒコが言った。「ニニキネ尊は筑紫の
24-127 タカチホゾ ワレハイセノサ
高千穂にお出でになるのでしょう。吾は伊勢の南の
24-128 ナガタガワ ナンチワガナオ
ナガタ川まで参ります。汝に、我の名を
24-129 アラワサバ ワレモイタサン
ニニキネ尊に伝えていただければ、我も一緒に参りましょう」
24-130 カエコトス ミマゴヨロコビ
アメノウスメはこの話をニニキネに伝えた。ニニキネは喜び
24-131 ウノハナモ マタカサシユク
卯の花もまた飾って出発した。
24-132 サルタシテ ダケノイワクラ
サルタヒコに山道の大きな岩を
24-133 オシハナチ イツノチワキノ
突き動かさせ、険しい道を切り開き
ヨロイザキ タケヤカガミノ
ヨロイザキに至った。岳山や鏡山や
【ヨロイザキ】 この前後に出てくる地名は、現在も琵琶湖周辺に残っている。「鎧」のついた所はあることはあるが「ヨロイザキ」という地名は不明。したがってここはカタカナ表記とした。
ミオノツチ ツムミカミヤマ
三尾の土を積んで神に祈り、三上山の麓に
【ミオノツチ】 「ミオ」は琵琶湖畔安曇川近辺に「三尾」と「水尾」とつく神社があり、「三尾里」という地名も残っている。「タケヤカガミノミオノツチ」の訳としては「タケ、カガミ、ミオの三つの土地の」と考える以外訳が考えられなかったが、「ノ」の扱いに無理がありそうに思う。地名も含めてより良い訳を考えていただきたい。土を積んだと言っても、山を築くほどではなく、儀式として使ったのではないか。36節の「ミオノチワキ」も三尾と岳山、鏡山の土をまとめて言っていると考える。
24-136 イセキツク サルタオホメテ
井堰を造った。ニニキネはサルタヒコに
24-137 ミオノカミ コノムウスメオ
ミオノカミの褒め名を与え、サルタヒコが好いたアメノウスメを
24-138 タマワリテ ソノナアラハス
妻合わせた。そしてサルタヒコの名を表わす
サルヘラト カクラオノコノ
サル部という部を与えた。神楽男子の
【カクラオノコ】 現代でも神社で神に奉納する神楽は巫女が舞っているように、もとはアメノウスメなど、女が舞っていたのであろう。獅子神楽のように男が舞う神楽はこのサルタヒコに始まったのだろう。
24-140 キミノモトナリ      
君の祖である。
24-141 ミコトノリ ミオノチワキモ
ニニキネが詔を下した。「三尾の土を積んで神を祭って開拓し、
24-142 タハココニ コレカガミナリ
田がここにできた。これは他の地の手本である。
24-143 カリミヤオ ミツホトナツク
この仮宮を瑞穂の宮と名付けよう」
24-144 タガニユキ ヌサオササケテ
その後、多賀の宮に行き、幣を奉げ、
24-145 ミノニユキ アマクニタマノ
美濃に行った。アマクニタマも一行が来たことを
ヨロコビモ ムカシカスガニ
喜び、「昔、カスガ命に見習って
【ムカシカスガニ ウルリヱテ ウムタカヒコネ】 「ウルリ」はそっくりなこと。ひとつは、昔カスガ命が婿に入ったこととタカヒコネが婿に来たこと、ひとつは、死んだ息子(アメワカヒコ)とタカヒコネが似ていたこと、この二つが掛けられている。それにちなみ、今でも美濃の特産になっているマクワウリを皆に配ったのだろう。
24-147 ウルリヱテ ウムタカヒコネ
亡くなった息子とそっくりなタカヒコネを婿にできました。
24-148 ササケモノ オノオノマクワ
そこで差し上げる物があります」と言って、各々にマクワウリを
24-149 ヒトカコト ヤソヨロコビテ
一籠ずつ配ったので一行は喜んだ。
クモヂワケ シナノスワヨリ
雲のかかる山を分け入り、信濃の諏訪より
【シナノスワヨリ ミチビケバ】 美濃からハラミ山への道中、諏訪より差し向けられた道に詳しいものが道案内をしたと考える。
24-151 ミチビケバ ハラミヤマカラ
道案内されてハラミ山(富士山)に着いた。ハラミ山から
24-152 ヨモオミテ スソノハヒロシ
四方を見て「裾野は広い。
24-153 ミツオウミ スソノタニセヨ
水を引いて、裾野を田にせよ」とニニキネは
24-154 タチカラヲ ヤモニホラシム
タチカラヲに、裾野に水を引く井堰を掘らせた。