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29-000 29タケヒトヤマトウチノアヤ
タケヒト、ヤマト討ちの綾
29-001 カンヤマト イハワレヒコノ
カンヤマトイハワレヒコの
29-002 スメラギハ ミヲヤアマキミ
皇はミヲヤ天君(ウガヤフキアワセズ)の
29-003 ヨツノミコ ハハハタマヨリ
第四子である。母はタマヨリ姫。
29-004 アニミヤノ ヰツセハタガノ
兄宮のイツセは多賀の
29-005 ヲキミナリ ミヲヤアマギミ
御君である。ミヲヤ天君が
29-006 ツクシタス ソトセヲサメテ
筑紫をまとめて十年治め、
ヒタルトキ アマキミノニオ
亡くなる時に天君の印を
【アマキミノニオ】 「ニ」は「瓊」の字があてられると思うが、これが11綾本文065でアマテルカミがヲシホミミに授けた「ヤサカニノマガリタマ」(八坂瓊の勾玉)と同じような「赤い玉」で、それは君の位につく印だったのだろうか。
29-008 タケヒトニ サヅケアヒラノ
タケヒトに授けて、アヒラの
29-009 カミトナル キミミヤザキニ
神となった。タケヒトは宮崎で
29-010 タネコラト マツリトルユエ
タネコ達と政を執ったので
シツカナリ カクヤマノトミ
筑紫は平穏であったが、香久山の臣の
【カクヤマノトミ】 香久山はニギハヤヒの宮。
29-012 ナガスネガ ママニフルエハ
ナガスネヒコが思うままにふるまったので
29-013 サハガシク ハラノヲキミハ
ヤマトは乱れた。ハラの御君タケテルは
29-014 カテトトム カレニナガスネ
食糧を止めた。するとナガスネヒコは
29-015 フネトトム オホモノヌシガ
船の行き来を妨害した。そこで大物主は
29-016 ウタントス タガノヲキミハ
ナガスネヒコを討とうとした。多賀の御君イツセは
29-017 オトロキテ ツクシニクタリ
驚いて筑紫に下り
29-018 トモニタス モノヌシヒトリ
タケヒトと共に政を執ったので、大物主は一人で
29-019 タミヲサム トキニタケヒト
多賀の民を治めた。ところで、タケヒトが
29-020 アビラヒメ メトリウムミコ
アビラ姫を娶って、生まれた皇子は
29-021 タギシミミ キミトシヨソヰ
タギシミミである。タケヒトが四十五歳になった時
29-022 モノガタリ ムカシノミヲヤ
話した。「昔の祖先の
29-023 タカムスビ ヒタカミウミテ
タカミムスビ尊が日高見を拓いてから
29-024 モマスヨホ スギテアマヒノ
百億万穂過ぎ、アマヒノ
29-025 ヲヲンカミ アメナルミチニ
ヲヲンカミ(アマテルカミ)はアメナル道によって
29-026 タミオタス ミコノオシヒト
民を治めた。皇子のオシヒト尊(オシホミミ)は
29-027 ユヅリウク ミマコキヨヒト
御位を譲り受け、皇孫のキヨヒト尊(ニニキネ)が
29-028 マタウケテ ワケイカツチノ
また御位を譲り受け、ワケイカツチの
29-029 アマキミト アメノイワクラ
天君と言われた。大きな岩を
オシヒラキ イヅノチワキニ
動かし、険しい道を拓いたので
【イツノチワキ】 「イツ」は厳しい、険しい。「チ」は土地。「ワキ」は分ける。開発する。ニニキネが困難を乗り越えて水田開発をしたこと。
ヲサマリテ ミヲヤニツカフ
世の中は豊かになって治まった。ホオデミ尊が後をついて
【ミヲヤニツカフ ミチアキテ】 「ミヲヤ」は「ミヲヤニツカフアマキミ」でホオデミのこと。「ミチアキテ」は道を開く。すなわち、親のニニキネより引きついで水田開発をしたこと。
29-032 ミチアキテ ヒカリカサヌル
道を拓いてから、明るく治まった
29-033 トシノカス モモナソコヨロ
年が長く続いた。百七十九万
29-034 フチヨモモ ナソホヘルマデ
二千四百七十穂過ぎるまでも
29-035 オチコチモ ウルハフクニノ
至る所に、国を栄えさせた
キミアリテ アレモミタレズ
優れた君がいたので、村々も乱れることなく
【キミアリテ】 「キミ」はアスカヲキミ、ハラノヲキミ、ニギハヤヒ、ウガヤフキアワセズなどの為政者のこと。
29-037 アメノミチ ヨニハヤルウタ
天下の道理が行き渡った」ところが世の中に流行ってきた歌があった。
29-038 ノリクタセホツマヂ    
「則を下しに来てください、ホツマの道の。
29-039 ヒロムアマノイワフネ   
則を広めに、天君も磐船に乗って。」
29-040 シホツチノ ヲキナススメテ
シホツチの翁が、タケヒトに大和の国へ行くようにと勧めて
29-041 ニギハヤカ イカンソユキテ
「ニギハヤヒ君がいけないのです。タケヒト君が行って
29-042 ムケサラン モロミコモゲニ
騒ぎを鎮めなければならないでしょう」と言うと、兄皇子達はまったく
29-043 イヤチコト サキニヲシテノ
その通りだと同意し「以前の世嗣文の件の
29-044 コタエツラ キミスミヤカニ
始末をつけなくてはならないだろうから、君は速やかに
29-045 ミユキナセ アススキミヱニ
御幸した方がいいでしょう」と言った。アスス暦キミヱ、
29-046 カンナミカ アミコミヅカラ
十月三日、タケヒト自ら
29-047 モロヒキテ ミフネノイタル
一同を率いて出立した。一行の乗った船が
ハヤスヒト ヨルアマオフネ
速吸瀬戸に差し掛かった時、海人の小舟が近づいてきた。
【ハヤスヒト】 現在は「速吸瀬戸」とよばれている、愛媛県佐田岬半島と大分県佐賀関半島の間の海峡。豊予海峡。
29-049 アヒワケガ トエハクニカミ
アヒワケが、誰かと聞くと「国守の
ウツヒコゾ ワダノツリニテ
ウツヒコです。海に釣り船を出してお待ちしていて、
【ワダノツリニテ キクミフネ】 タケヒト一行が来ることを知っていて水先案内をしたのだろう。ではなぜ来ることが分かっていたのか。私は、各地の海岸沿い、特に瀬戸内海に多い高地性集落が、海を航行する貴人の動向を狼煙などで先に知らせる通信基地の働きをしていたのではないかと考える。
29-051 キクミフネ ムカフハミフネ
君の御船が来られると聞いたので、御船をお迎えに来たのです」
29-052 ミチビクカ アヒトコタエテ
「案内してくれるか」と言うと、「ハイ」と答えたので