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29-105 クダサント カミモウメナリ
下せばよいでしょう」と答えると、アマテルカミも「もっともだ」と言われた。
29-106 ミカツチノ フツノミタマオ
タケミカツチが「フツの御魂の剣を
29-107 クラニオク コレタテマツレ
倉に置くから、これを皇に差し上げなさい」といったので
29-108 アヒアヒト タカクラシタガ
「あいあい」とタカクラシタが言った所で
29-109 ユメサメテ クラオヒラケバ
夢が覚めた。倉を開けて
29-110 ソコイタニ タチタルツルギ
床に立てておいたフツの御魂の剣を取り出し
29-111 ススムレバ キミノナガネノ
皇に差し上げると、皇は毒気による
29-112 ヲヱサメテ モロモサムレバ
永い眠りから目覚め、一行もまた眠りから覚めて
29-113 イクサダチ ヤマヂケワシク
軍を進めた。山道が険しく
29-114 スエタエテ ノニシヂマヒテ
進む道もなくなり、藪の中で進退窮まった。
29-115 スメラギノ ユメニアマテル
皇がまどろんでいると、夢にアマテルカミの
カミノツケ ヤタノカラスオ
告げがあった。「ヤタノカラスに
【ヤタノカラス】 日本書紀に「朕今頭八咫烏遣(アレイマヤタノカラスヲツカワス)」とあるが、ここでは、そのようなカラスではなく「ヤタノカラス」と呼ばれるこの土地に詳しい者。間者の任を帯びた者か。
29-117 ミチビキト サムレバヤタノ
導かせよう」目覚めるとヤタノカラスの
29-118 カラスアリ オオチガウガツ
翁がいた。翁が切り拓いた
29-119 アスカミチ イクサヒキユク
飛鳥道を、ミチヲミが軍を率いて進んで行った。
ミチオミガ ミネコエウダノ
峰を越えてウダの
【ウダノ ウガチムラ】 奈良市に菟田野宇賀志という地名が残っているが、その近くには宇陀という地名もあるので、「ウダ」と表す。
29-121 ウガチムラ ウガヌシメセバ
ウガチ村に着き、皇がウガチ村のウカ主を召したが
29-122 アニハコズ オトハモフデテ
兄は来なかった。弟は来て
29-123 ツゲモフス アニサカラエド
申し上げた。「兄は逆らっています。
ミアエシテ ハカルクルリオ
宴を開いて、クルリを仕掛けていますから、
【ハカルクルリ】 大辞林に「クルリ」は枢(クルル)の転で、扉を回転させて開閉する装置のこととある。扉を開いた時に何らかの仕掛けで殺傷するようにしたものであろう。
29-125 シロシメセ カレニミチヲミ
お気を付けください」そこでミチヲミが
29-126 サガスレバ アダナスコトオ
兄を捜し出すと、敵意むき出しの言葉を
29-127 オタケビテ ナンヂガツクル
大声で叫んだ。「汝が作った
29-128 ヤニオレト ツルギヨユミト
家に入れ」と、剣や弓で
29-129 セメラレテ イナムトコナキ
ミチヲミに攻められて、避けようのない
29-130 アメノツミ オノガクルリニ
天罰で自分の作ったクルリによって
29-131 マカルナリ オトハモテナス
死んでしまった。弟は
29-132 キミトミモ ヨシノヲノヱノ
君や臣をもてなした。吉野尾上の
29-133 ヰヒカリモ イワワケカミモ
ヰヒカリもイワワケも
29-134 イデムカフ タカクラヤマノ
皇の軍を出迎えた。タカクラ山の
29-135 フモトニハ ヱシギガイクサ
麓では、兄シギの軍が
イハワレノ カナメニヨリテ
磐余の要所に陣取って
【イハワレ】 桜井市の桜井駅付近に磐余(イワレ)という古い地名が残っている。
29-137 ミチフサグ スメラギイノル
行く手を塞いだ。皇が祈ると
29-138 ユメノツゲ カミオマツレヨ
その夜に夢の告げがあった。「神を祭れ。
29-139 カクヤマノ ハニノヒラデニ
香久山の土で平皿を作り
ヒモロゲト カミノヲシエニ
供物を奉げよ」そこで神の教えの通りに
【ヒモロゲ】 大辞林に「ヒモロギ」として、「神にそなえる米・餅・肉などの供物。ひぼろぎ・ひぼろけ・ひもろけ」とある。
29-141 ナサントス オトウガシキテ
しようとした。弟ウガシが来て
シギタケル カタキアカシモ
「兄シギの兵もカタキアカシも
【シギタケル】 本文202に「タケルトモ」とあるのは兄シギの兵達。すると、ここの「シギタケル」も兄シギの兵と考えられる。
29-143 ミナコバム キミオオモエハ
皆拒んでいます。君が心配なので
29-144 カクヤマノ ハニノヒラテノ
香久山の土で作った平皿に
29-145 ヒモロケニ アメツチマツリ
供物を盛って天の神と地の神に奉ります。
29-146 ノチウタン ウガシガツゲモ
その後に討ったらいかがでしょうか」と言った。ウガシの言ったことも
29-147 ユメアワセ シイネツヒコハ
夢の告げと同じであった。皇は「シイネツヒコは
29-148 ミノトカサ ミオモツウガシ
蓑を着て笠をかぶり、箕を持ったウガシと
29-149 ヲヂウバノ タミノスガタデ
老人と老婆の民の姿で
29-150 カクヤマノ ミネノハニトリ
香久山の峰の土を取って参れ。
29-151 カエコトハ ミヨノウラカタ
その首尾は、これからの我々を占う大事なことだから
29-152 ユメユメト ツツシミトレト
努めて慎んで取ってくるように」と
29-153 ミコトノリ チマタニアダノ
命じた。辻々に敵が
29-154 ミチオレバ シイネツヒコガ
大勢いるので、シイネツヒコが
29-155 イノリイフ ワカキミクニオ
祈った。「我が君が国を
29-156 サタムナラ ミチモヒラケン
治めるならば、必ずや道も
29-157 カナラズト タタチニユケバ
開けるだろう」。すぐさま行くと
29-158 アダモミテ サマオワラヒテ
敵も二人の様子を見て笑いながら