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県主が来ました。アマテルカミの
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前例があったので、胞衣を祭らせてもらうように願い出た時、
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ニニキネ君が詔を下されました。『ハニシナ主は
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胞衣が岳でアマテルカミの胞衣を守っているので、ハエシナ主および
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サラシナ主とツマシナ主が
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この三皇子の胞衣をそれぞれの山の尾根に納めて
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守れよ』。その末弟の皇子の
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ウツキネ尊は筑紫の国に行き
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田を肥沃にして、「御親に仕える天君」の称号を受け
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民を慈しんで長年国を治めた後、
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以前いた近江に帰って、君の御位を譲り受けました。
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ウツキネ君は「御親に仕える天君」として
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長い年月治めた後亡くなり
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食飯の神と称えられました。皇子のカモヒト尊は
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御位を受け継いで、宮をミヅホの宮から
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多賀の宮に遷しました。治めている民を
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我が子のように慈しみ、天の神の意に応えて政を執ったので
【アメニコタフル】
「天の意に応える」、すなわち正しい政をおこなうこと。
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称え名はミヲヤアマキミとなりました。
【ミヲヤアマキミ】
ウツキネは親のニニキネの跡を継いで、新田開発に努めたので「『御親』に仕える天君」としたが、カモヒト(ウガヤフキアワセズ)は27綾本文131でアマテルカミから「カミモクダリテ ウヤマエバ 『カミノミヲヤ』ゾ」と、名を授けられている。
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カモヒト尊の政は
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長く続き、その後も長く
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国は豊かでした。イサワの宮の
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アマテルカミの十二人の妃も
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亡くなりました。セオリツ姫の御魂と共に
【セオリツヒメト ヲヲンカミ】
一読では、あたかもセオリツ姫が生きているように受け取れるが、11綾本文015でムカツ姫となっているセオリツ姫が亡くなっている。アマテルカミはセオリツ姫の御霊を連れて宮を遷したということであろう。
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アマテルカミは宮を遷そうと思われ、
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ミモ川に、最期の時の場所を定め
【ミモカワ】
御裳濯川(ﾐﾓｽｿｶﾞﾜ)の異名がある伊勢市の五十鈴川だろうか。
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この世のサコクシロとして宇治に宮を造り
【サコクシロ】
「サ」は「清い、浄い」、「クシ」は「奇し」と読めそうだが、「コ」と「ロ」が不明。この綾の本文165と200、36綾本文102・134・143、40綾本文075にも出てくる。不明な部分はあるが、これらは共通して、天上にある浄められた魂が最後に落ち着く天界、浄く汚れのない崇高なところ、天界の49神のいると思われる所というようなものと考える。アマテル神は宇治の宮をそのようなところと考えたのであろう。
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何年か経ちました。すると五十本目のマサカキが
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宮に生えました。アマテルカミはよくよく考え、
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植えないのに自然に生えるのも神の思し召しで、
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御自身の寿命を神がお決めになったのだと思われました。
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大勢の臣をお呼びになって、『吾は世に
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別れを告げようと思い、サルタヒコに穴を
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掘らせた。真名井で約束した
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朝日宮のトヨケ神と同じ所に隠れよう』と
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話されたので、一堂は驚いて
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留めましたが、『いやいや、吾は
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民のために、苦いハオ菜を食べて
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非常に長く（百七十三万二千五百年）
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生きてきた。君として、民を幸せにする楽しみを
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味わってきたので、この歌を残していこう。
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――常に天の声を聞くサヲシカ八咫の
【サヲシカヤタノ ワガカムリ】
奉呈文の本文031に冠をかぶって神の告げを聞くとある。
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冠で、臣や民に
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告げを届け、君・臣・民を一つにまとめて
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君の御位を受け継がせてきた。民の心を受け止めよと
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君・臣・民のあるべき姿の教えを残して
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吾は天に還る。だが、
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吾のタマが還るのを悲しむでない、人は天の裳裾の
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上にいて、吾は冠となり、
【ワレハカンムリ】
アマテルカミは「常々サヲシカ八咫の冠をかぶり、耳近くに垂れる緒を通して神の告げを聞いて政を執ってきたが、自分が天に昇ったら、自分が神の告げを伝える冠となり、この世に残る民を冠の緒として必ず恵みを伝えるので悲しまないでほしい」と言っていると解釈した。「カンムリ」「サシ」「サオシカ」のように書かれているが、「サヲシカヤタノカンムリ」の短縮と考える。
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民は耳の近くにある冠の緒となるのである。
【ヒトグサハ ミミチカキヲゾ】
「ヒトグサ」は「アオヒトクサ」と同じ。天に還ったアマテルカミは生前冠の緒から天の声を聴いたように、民の声を聴くということ。アマテルカミと民とは、天に還っても繋がっていると言っているのだろう。
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人々の心が清ければ、体が汚れていても
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サヲシカ八咫の冠となった吾が受け止めて天の神に告げ、
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神の恵みがサヲシカ八咫の冠の八本の緒である民に