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28-356 モニイルハ アメモノゴトシ
喪に服したのは、まるで君の喪のようだった。
サルタヒコ ミソギニアワノ
サルタヒコが禊ぎをしていると、何やら
【サルタヒコ ミソギニアワノ】 ここからの話はカスガが亡くなる少し前のこと。
28-358 ムナサハギ フトマニミレバ
胸騒ぎがした。フトマニで占ってみると
28-359 ヰムノミハ カカミヱヱナル
五六の三と出て、これは鏡の臣が目をかけている者の
28-360 ナカヒトリ ウレヒアリトテ
中の一人に憂いが残るということだと読めた。
28-361 コレマツリ ウケヌウレイト
これは自分がカスガから政の文を与えられていないという憂いだと思い、
28-362 オトロキテ ウヂニイタレバ
驚いて宇治に行き、
28-363 ミカサヤマ ナオハセノボル
なおも三蓋山を駆け上がった。
カスガトノ ハヤカリオサメ
カスガの宮では最早仮納めされ
【カスガトノ】 ここで亡くなった「カズカ」はアマノコヤネで、「カスガカミ」と呼ばれている。「カスガトノ」を人名とすると、父親のココトムスビを指すことになるので、ここの「カスガトノ」はカスガの宮のことになる。
28-365 モナカユエ トモニモニイリ
喪の最中だったので、皆と一緒に喪に服した。
28-366 ミコシナシ アスヒラオカニ
カスガを御輿に乗せて、その翌日平岡に
28-367 オクルトキ サルタガコエハ
送ろうとしている時、サルタヒコが一目会いたいと願うと
28-368 ユルサレテ ミコシアクレバ
許された。御輿を開けて
28-369 サルタヒコ ワレツネニコフ
サルタヒコが「我がいつも戴きたいと願っていた
28-370 タマカエシ オヰヱトフタヱ
魂返しの文がカスガ殿の家とアメフタヱの家に
28-371 ヒフミアリ イマワレヒトリ
一文ずつあります。今、我一人が
28-372 ウケザルト チヂニゾクヤム
頂いていないので、とても残念です」と言った。
トキニカミ メオアキイワク
するとカスガは、神輿の中で目を開け
【トキニカミ メオアキイワク】 この時代は、トヨケ、2代目大物主クシヒコ、アマテルカミなど、自分の死期を悟ると自ら洞に入って最期を迎えた。カスガもサルタヒコが来たときはまだ生きていた。
28-374 ナンチヨク ワスレズキタル
「汝、よく忘れずに来たな。
28-375 ミモスソヨ コフハコレゾト
御裳裾よ、欲しかった物はこれであろう」と
28-376 サヅケマス サルタウケトリ
マツリの文を授けた。サルタヒコが受け取り
28-377 トワントス ハヤメオトチテ
声をかけようとしたが、カスガは早くも目を閉じて
28-378 コタエナシ ミユキコトナリ
返事はなかった。それは平岡に出発する時のことであった
28-379 ソノノチニ ミモスソトエバ
その後、御裳裾とはどういうことかと聞かれて
28-380 サルタヒコ ムカシハタレオ
サルタヒコが言った。「昔ハタレを
28-381 ヤフラント ミソキナストキ
退治しようと、禊ぎをした時
28-382 カミノモノ イワニカカリテ
アマテルカミの裳裾が岩に引っかかったので
28-383 ヒタヒケバ タキオチクタル
岩を力任せに引っ張ったら、滝の水が落ちてくるように
28-384 サクナダリ アメニイノレバ
川の水が勢いよく流れました。天の神に祈っていると
28-385 クズナガレ ハミアシオカム
葛が流れてきました。その時蛇が君の足を咬みました。
28-386 オイツメテ トマルワラビデ
蛇を追い詰めて止まったところ、葛で蛇を蕨縄のように
28-387 ククリスツ モスソノクズニ
縛って捨てたのです。我が裳裾に掛かった葛で
ヤブルユエ ススクスモチヒ
蛇を退治したので、君はその*葛の縄を使って
【ススクス】 「スス」は「スソ」と同義の言葉と考え、「裳裾に掛かった葛」とした。アマテルカミは、サルタヒコが水にさらされて繊維状になった葛を縄として蛇を縛ったことをヒントに戦術を考えたと解釈した。
28-389 コレオタス シムミチヤブル
相手を制するシムミチ退治の
28-390 ウツワヱル ミナミソキシテ
方法を考えつきました。どのときも君が禊ぎをし、
28-391 ウツワヱテ ムミチオヤフリ
作戦を得られ、六つのハタレを破り
28-392 ヲサムタミ ミナミモスソノ
民を治めました。我が『御裳裾』と言われるのは、君の御裳裾が流れの
28-393 ナガレナリ サルタアサカニ
岩に引っかかったことに始まったのです」。サルタヒコがアサカにいた時、
スナトリノ ヒラコニカマレ
漁夫がヒラコ貝に挟まれて
【ヒラコ】 漁夫が溺れるほどの大きな貝として考えられるのは、35センチほどにもなる「タイラギ」ではないか。土地によって「ヒラブ」「ヒランボ」などとも呼ばれて、名前も似ている。
オホルルオ キミウスメシテ
溺れた。サルタヒコが見つけて、アメノウズメに
【キミウスメシテ】 「キミ」は通常スメラミコトに付けられるが、ここではサルタヒコ以外には考えられない。
28-396 ソコトクニ ツブタツアハノ
急いで水底に潜らせ、泡がツブツブと
28-397 サクトコニ ヒキアケサシム
出てくるところから、漁夫を引き揚げさせた。
28-398 ワラニタス ハビラオヌキテ
藁に寝かせて、貝殻を外し
28-399 ナマコナス サキニカグヤマ
貝を海鼠のようにした。かつて、香久山の
28-400 ナガスネハ ミヲヤスヘラギ
ナガスネヒコはウガヤフキアワセズに
28-401 ミコナキオ オシクモイノル
皇子が生まれなかったとき、オシクモが皇子を授かるように祈った
28-402 ソノフミオ コエトサヅケズ
「世嗣文」を見せるように頼んだが、見せてもらえなかった。
28-403 マカルノチ アマノタネコハ
ウガヤフキアワセズが亡くなった後に、アマノタネコが
28-404 コノフミオ ミカサニコメテ
その文を三蓋山の蔵に納めて
28-405 キミノトモ ナガスネヒコハ
タケヒトの供をして筑紫に行った。ナガスネヒコは
28-406 ソノクラオ ヒソカニアケテ
その蔵を秘かに開けて
28-407 ウツシトル クラトミツケテ
文を写し取った。蔵の番人が見つけて
28-408 コレオツグ タネコオトロキ
それをタネコに知らせた。タネコは驚いて
28-409 キミニツグ サヲシカヤレハ
タケヒトに知らせた。タケヒトが勅使を出すと