【「アナニヱヤ ヱツハウツユフ…ソラミツヤマト」】
このタケヒトの言葉の訳は、日本書紀やこれまでのホツマツタヱの訳とは全く異なっている。そのカギとなるのが「カタチアキツノトナメセル」という文。岩波文庫版日本書紀の「内木綿の真迮き国と雖も、猶し蜻蛉の臀呫の如くにあるかな」の注に「狭い国ではあるけれども、蜻蛉がトナメして行くように、山々がつづいて囲んでいる国だなの意」とあるが、少なくも代々の君が築き上げた国で、この時代の移動手段からして決して狭い国ではないはずのヤマトを、しかも「神武天皇」と呼ばれるようになる人物が、自分の国をトンボが交尾しながら飛ぶ姿に例えるだろうか。それはないと私は強く思う。では、どう訳すのか。私は「アナニエヤ」にイサナギ、イサナミの国造りの始まりが、また「アキツ」に「チイモアキ」の「アキ」が頭に浮かんだ。それを手掛かりに、このタケヒトの言葉は、ホホマの丘からの眺めに、ヤマトの国の来し方を感慨深く思ったものとして解釈したのである。
【ヱツハウツユフ】
「ヱツハ」は「得たものは」と解釈した。「ウツ」は広辞苑では接頭語として「『まるまる』の意を表す」とある。「ユフ」は結う、ひとまとめにすることとした。