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16-053 ヲニクバル イモノミナカミ
「男」の要素となりました。メの二つの元素は
16-054 ツキトコル ハニチカキユエ
固まって月となり、大地に近いので
16-055 メニクバリ ウツホカセホト
「女」の要素となりました。このウツホ、カゼ、ホと
16-056 ミツハニノ ヰツマシワリテ
ミズ、ハニの五元素が混じり合って
16-057 ヒトトナル ノチハイモヲセ
人となるのです。それから後は夫婦が
16-058 トツギウム ヲハハニムカヒ
交わって子を産むようになったのです。夫が妻と
トツグトキ カリノシジナミ
交わると、夫の精水は
【カリノシジナミ】 ここから「トワタナス」までは難解語の連続。正確に訳すことは現時点ではできないが、文脈に沿って訳を試みることにする。「カリ」は「離り」の意とみて、「シジナミ」が離れる。14綾本文109に「シヂ」とあり、陰茎と訳した。そこで「シジナミ」は放出された精水(精液)とした。
ホネアブラ メハアニムカヒ
胎児の元とその生命力となります。そして妻が夫と
【ホネアブラ】 「ホネ」は14綾本文072の「シラホネ」と同じ。胎児の発生の元となるもの。「アブラ」はシラホネを育てるエネルギー、生命力のようなものとした。例えれば卵の黄身のようなものか。
マシワリノ カネノニシナギ
交わるといつもの出血はおさまり
【カネノニシナギ】 「カネ」は「予」と読み、「ふだん、平生」と解釈した。「ニシ」は14綾本文073に「ハハノアカチ」とあるので、他の写本の「ニチ」を採用し、「赤い血」とした。「ナギ」は「和ぎ」と読み、「おさまる」と解釈した。すなわち生理が止まること。
トワタナス チチノカリナミ
胎児の血や臓器の元となります。夫の精水が
【トワタ】 「ト」の適切な訳がないが、別の写本では「チワタ」となっているので、「チ」とし、血と臓器とした。
【チチノカリナミ】 「カリノシジナミ」と同じ。
タマシマエ シハスルトキニ
子宮へ素早く届き
【シハスル】 「シ」は「シジナミ」の略。「ハスル」は馳せるのことか。
16-064 チナミアヒ ヒルハニウエニ
妻の血と一緒になります。昼は血が上になって
16-065 ヒタノホリ ヨルハシウエニ
左から上り、夜は精水が上になって
16-066 ミギクダリ アスフタメグリ
右から下ります。次の日は二巡り、
16-067 ミメクリト ミソカニハミソ
次は三巡りと増えて、三十日目には三十巡りとなります。
16-068 ミソヒフミ ミカタリユルム
三十一、三十二、三十三日の三日間は巡りが十分になり、増えなくなります。
16-069 タラムトテ ハハノツツシミ
順調だと言っても、母親として慎重に行動しなくてはなりません。
ヲノイキス ヨロミチムヤソ
男の呼吸数は一万三千六百八十回で
【ヲノイキス…】 「イキス」は呼吸。男と女の呼吸数だが、何を根拠の数かは不明。通常、成人の呼吸数は1分間に12~20回と言われている。1日にすると17280回~28800回となる。
16-071 メノイキス ヨロミチモヤム
女の呼吸数は一万三千百八十六回です。
16-072 ミタネエテ ハハニマスイキ
身籠った母親の呼吸数の増加は、
16-073 ミモムソノ アスハナモフソ
一日目は三百六十回となり、次の日は七百二十回、
16-074 ミカチヤソ ミソカヨロヤモ
三日目は千八十回、三十日目は一万八百回、
16-075 ミソヤカニ ヨロミチムヤソ
三十八日目には一万三千六百八十回となります。
モトトマシ フヨロムチヤモ
母親の元の呼吸数と合わせると、二万六千八百
【フヨロムチヤモ ヨソムタビ】 計算すると20回足りない。
16-077 ヨソムタビ マシトトマリテ
四十六回で、それで増えなくなります。
16-078 ミメクリハ フツキイタレバ
巡りは二月目に入ると、
ミカハシリ シハサラニキル
三日間は巡りが速くなり、その時は、着る物を重ねます。
【シハサラニキル キサラトテ】 「シ」の語義不詳。「更に着る」に続く文脈から推測して、すぐ上の「ハシリ」を指す中称の指示代名詞の「シ(其)」と考え「早くなった時」、訳では「その時」とした。「キサラ」は「着更」か。(旧暦)2月の「きさらぎ」を衣更着、衣更月、絹更月、などと書くことと関係があるのだろうか。広辞苑では「生更ぎ」として、「草木の更生することをいう」としている。
16-080 キサラトテ ハハノツツシミ
キサラといって、大事な時なので母親は体を大事にします。
16-081 ムソヨカハ ムソヨメグリニ
六十四日目は、六十四巡りと
16-082 キワマリテ ミメグリスベテ
最高に達し、巡りは全部で
16-083 チヤソナリ ツヒニタネナル
千八十回になり、胎児の体ができます。
16-084 オノコロノ ヱナノヘソノヲ
自ずとできてきた胞衣のへその緒と、
16-085 カワクルマ ヤヤシシオモリ
皮くるま(胎盤)はだいぶ充実してきて、
16-086 メグリヘル アスムソミタビ
巡りが少なくなります。次の日は六十三巡り、
16-087 ツギムソフ オソリメクリテ
その次の日は六十二巡りと、巡りが遅くなり
16-088 ミツキニハ ミソコトナレハ
三か月目には三十九巡りとなって
ミカヤスム ミトリハナナリ
三日休みます。この頃は胎児が成長を始めるので、
【ミトリハナナリ】 胎児の成長を植物の成長や季節になぞらえて表すことが多い。ここでも「ミトリ」は若葉が出てきた様子になぞらえたのだろう。「ハナ」はその初めの頃。
16-090 ヤヨイサム ヤヨモツツシミ
母親は張り切るけれど、一層慎重に行動しなくてはいけません。
ヨツキニハ コノミウルフモ
四か月目には、母親はゆとりが出てきますが、
【ウルフ】 潤う。ここではゆとりができること。多くは4か月目くらいにつわりが収まる。
16-092 ツツシミヨ ヰツキハモトノ
無理をしてはいけません。五か月目には元の
16-093 ヒトメクリ イハフヨロムチ
一巡りになります。呼吸数は二万六千
16-094 ヤモヨソム ハラオビノヰモ
八百四十六回のままです。腹帯をしても母は
16-095 ツツシミヨ アモトニマネク
行動を慎みなさい。アモト神から降ろされた
アラミタマ ツキノニコタマ
行動的な気立てと優しい気立てと
【アラミタマ】 日のアラミタマ。荒々しく活動的な作用をすると考えられた神霊(大辞林)ということから、行動的な性格・気立てとした。
【ツキノニコタマ】 月のニコタマ。「ニコタマ」は「ニキミタマ、ニキタマ」のことと捉えた。「ニキミタマ」は平和・静穏などの作用をする神霊(大辞林)ということから、「ツキノニコタマ」を優しい性格とした。
タラノヒト ミツマジハリテ
父母の生命力の三つが混じって
【タラノヒ】 14綾本文091には「タラチネノホ」とある。「ホ・ヒ」は漢字で「火」と表したが、生命力、エネルギーというようなもの。
ココロイキ ナリテミツカフ
気立てが決まり、腹の水も増えて
【ミツカフ ツユアフレ】 「ミツカフ」の語義不詳。14綾本文091に「アメノホト タラチネノホト メオマネキ」という、同様の記述がある。そこでは「メ」を「ハニと水」と訳したが、ここは「ツユアアフレ」と続くので、羊水をイメージして「水」とした。「カウ」は「カヨウ」の「ヨ」の省略と考え、「入っていく」と訳した。この時期になると腹が膨らみ、羊水が満ちることは経験していたのであろう。これらはこの時代に信じられていた「科学」の話で、分かりにくい訳になった。よい訳をお教えいただきたい。
16-099 ツユアフレ ムツキイタレハ
胞衣の中はあふれるように潤います。六か月目になると