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16-191 ヨロタミノ ウラメンメドノ
万民の恨みの程度を知る
16-192 ヨロサクラ アメニウヱテシ
万桜も宮中に植えてあります。
オロカメガ ネタムイソラノ
愚かな女が妬むと、イソラの
【イソラノ カナツヱ】 「イソラ」は8綾に出てくるハタレのイソラとは違い、怨念のようなもの。「カナツヱ」はそれによる悪い影響の例え。
16-194 カナツヱニ コタネウタレテ
金杖のごとくに、妬まれた人の子種が打たれて
16-195 ナガレユク アルハカタワト
流れてしまいます。あるいは障害のある子に
16-196 ナスイソラ ネタムソノイキ
してしまうイソラもいます。妬む人はその息が
16-197 ヒヨロミチ ムレテウロコノ
一万三千ものまとわり付いた鱗となり
16-198 オロチナス タマシマノヒマ
大蛇になってしまいます。ホトの隙間を
16-199 ウカカヒテ コツボニイリテ
窺って子宮に入ってきて
16-200 ハラミコオ カミクダクユエ
お腹の子をかみ砕くので
16-201 タネナラズ カタワウムナリ
うまく成長できなくて、障害のある子が生まれるのです。
16-202 マヅシキハ オヨバヌトミオ
貧しい者は手の届かない富を
16-203 ウラヤミテ ウラミノアダニ
羨んで、恨むことが仇となり
16-204 タネホロブ ヒトオウラメハ
自分の子もできなくなってしまいます。人を妬めば
ヒニミタビ ホノホクラヒテ
一日に何回も妬みに心が焦がされて
【ヒニミタビ】 直訳すれば「1日に3度」となるが、この場合は「何回も」「度々」のように考える。
16-206 ミモヤスル ネタムネタマル
身も痩せてしまいます。妬むことも、妬まれることも
16-207 ミナトガゾ タトエバハベル
どちらも罪なのです。例えば、宮に仕える
16-208 アオメタチ ヰイロノハナゾ
若い女達は五色の花です。
ソノキミノ ココロアオキハ
その宮の君が青を好む時は
【ココロアオキハ】 青や黄などの色は、感情・感性などの心の状態のたとえ。
16-210 アオニメデ キナルハハナノ
青い花を愛で、黄を好む時は
16-211 キオメデシ アカキハハナノ
黄の花を愛で、赤を好む時は
16-212 アカニメデ シロキハハナノ
赤い花を愛で、白を好む時は
16-213 シロニメデ クロキハハナノ
白い花を愛で、黒を好む時は
16-214 クロニメズ オナジココロニ
黒い花を愛でます。このように心が通じると
16-215 アイモトム キミノココロト
惹かれあうのです。君の心と
16-216 ワガハナト アフヤアワヌヤ
自分の花の色と、合うか合わないかは
16-217 アエシラズ テレハウラムナ
誰も全く分からないのです。だから恨んではいけません。
アゲラルモ ヱモベモヨラズ
君がお召しになるのは上下の関係なく
【ヱモベモヨラズ】 「ヱ」は「上」、「ベ」は「辺」と読み、位の上の女とその周りの位の低い女と解釈し、「上下の関係」とした。
16-219 モトムナリ テレバメストモ
お求めになるのです。ですから、
16-220 イクタビモ オソレテノチハ
何度もお召しがかかっても、周りに配慮していれば、
16-221 ウラミナシ ツツシミハコレ
後で恨まれることはないでしょう。慎みというのはこういうことです。
16-222 モロヒメラ マサニシルヘシ
すべての姫は、次のことは当然知っておくべきです。
イロノハナ ヒトタビメデテ
きれいな色の花といえど、一時は愛でられても
【イロノハナ】 「きれいな色の花」は魅力的な女性の比喩的表現。この後の「ミノハナ」はその女性の容貌や年頃だけでなく、知性なども含んだ「魅力」ということであろう。
16-224 ハヤチレハ チリトステラレ
いったん散ってしまえば、塵のように捨てられます。
16-225 ヨソノハナ メストキハソノ
別の花を召す時は
16-226 ハナサカリ ツラツラオモエ
その花の盛りの時なのです。よくよく考えてください、
16-227 ミノハナモ ヒトモウツレバ
我が身の花も他人の花も時が移れば
16-228 チルハナゾ タレサシウラム
散る花になるのです。誰が悪いと恨む
ヒトモナシ モシアヤマレバ
相手はいないのです。もし、誤って人を恨むと
【モシアヤマレバ タネタチテ】 ここから本文236の「コタネカム」までの主述の関係が分かりにくい。誤って人を恨むと、子種が断たれるのは自分なのか相手なのか、「ソノヒト」は見咎めた人か、見咎められた人か。その見極めは、「コタネカム」。本文193の「オロカメガ ネタムイソラノ カナツヱニ コタネウタレテ ナガレユク」と、本文198の「タマシマノヒマ ウカガイテ コツボニイリテ ハラミコオ カミクダクユエ タネナラス」でねたまれた人の子種が流れたり、障害のある子になったりすると解釈できる。また、本文138の「ハナトハナ ウテバチルナリ」からも、妬まれた人にも妬んだ人にも害が及ぶことが分かる。
16-230 タネタチテ ミトガメアレド
相手の子種を断ってしまいます。誰かを見咎め妬んでも
16-231 ソノヒトハ マダタチモタズ
その妬んだ人は、まだ太刀を持ってもいず、
16-232 ツヱウタズ ヒトウチコロス
杖で打つでもなく、人を打ち殺す
16-233 ユエモナシ メハヒトミチニ
わけでもありません。ただその女は一途に
16-234 オモエトモ ネタミワツラフ
思っただけなのに、妬みで苦しむ
16-235 ムネノホガ オロチトナリテ
胸の炎が大蛇となって
16-236 コタネカム サワリノゾカン
相手の子種を咬むのです。その害を除くための
16-237 ヨツギフミ ツツシムアヤノ
世嗣文の『慎む綾』には、
16-238 ハナトハナ ウテバチルナリ
『花と花でも打ち合えば散る。
16-239 モロトモニ ツネニツツシミ
互いに常に慎むことを
16-240 ナワスレソコレ      
忘れてはいけない』とあります」。
ハラミコオ トヒウルタメノ
姫のお腹の子どものことについての質問を受けるため
【トヒウルタメノ タビヤドリ】 「タヒヤドリ」したのはだれか。本文311に「コモリマタ コレハカツテガ ヨクシレリ ワレカエルノチ クダスヘシ」、また、本文338に「コモリハアメニ カエリケリ」とあるので、旅宿りしたのはコモリ。
16-242 タビヤドリ アルヒヒメカミ
訪ねてきたコモリが留まっていたある日、姫が
16-243 マタノトヒ オシエノオビハ
また聞いた。「タマキネ尊が教えられた帯には