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28キミトミノコシノリノアヤ
君・臣、遺し宣の綾
【キミトミ】 「キミ」はアマテルカミ、「トミ」はカスガ(アマノコヤネ)。
28-001 ヰソススノ チヱノハタトシ
五十スズ、千枝、二十年。
28-002 アメカワル コヨミマダトテ
君が代わったのに、新しい暦がまだできていないので
モノヌシガ イセニモフデテ
大物主のクシミカタマが伊勢に伺い
【イセニモフデテ】 伊勢にいるのは4行後に出でくるカスガだが、訪ねて行った先は伊勢にいるアメフタヱ。
コレオトフ フタヱコレヨリ
このことを聞いた。アメフタヱは君が代わった時から
【フタヱコレヨリ ウカガハデ】 「コレ」は天君が代った時を指す。
ウカカハデ コフトノニウク
多賀に伺うべきところ、多賀の大物主が訪ねてきてくれたので
【ウカガハデ】 アメフタエは、君が代ったので暦について相談しに多賀に行かなければならないと思っていた。タケヒトは君を継いだが筑紫にいたので、多賀の御君イツセが左右の臣のオシクモと大物主のいる多賀で政を執っていた。
【コフトノニウク】 「コフトノ」は多賀。「ウク」は受ける、すなわち来てもらうこと。
28-006 ヨロコビト トモニイタレル
喜び、共に
28-007 オウチミヤ カスガニアイテ
伊勢のオウチ宮に行った。カスガに会って
28-008 モトオトフ ヲキナコタエテ
スズキ暦の成り立ちを聞いた。カスガは次のように答えた。
28-009 コノススハ アメツチヒラク
「このスズキ暦は天地開闢の頃、
28-010 トコタチノ ミヤノマサカキ
クニトコタチが宮にマサカキを植えたのが始まりです。
アヱチヱニ サクスストナル
その枝が千枝になると、マサカキは枯れます。
【アヱ】 直訳すれば「天の枝」。「ア」は美称か。
28-012 ウヱツギノ ヰモニイタレハ
植え継いで五百本になると
ミモハカリ ヨロトシミチテ
三千万年となります。
【ミモハカリ】 1ハカリが10万。
28-014 ヰモツギノ アマノマサカキ
五百一本目のマサカキの
28-015 トシノホノ トトセニハヰキ
一年目に出た穂は、十年で五寸、
28-016 ムソトシニ ミタノブヱトノ
六十年で三咫伸びて、それがヱトの
28-017 ヒトメグリ アクルトシナル
一巡りとなります。新しい年が始まって
28-018 ミタノアヱ ナレハフタヱト
三咫枝が伸びると、ヱトが二回り目となり
28-019 キアヱヨリ ヱトホトカゾエ
またキアヱから枝と穂を数えます。
28-020 ヒトヱムソ トヱハムモトセ
一枝が六十年、十枝で六百年、
28-021 モヱハムチ チヱニムヨロオ
百枝で六千年、千枝では六万年となるように
28-022 アマモリノ ヒトメクリヅツ
暦の守はヱトを一巡りずつさせて
28-023 コヨミナル カレチヱノトシ
暦を作ります。ですから、千枝の年に
28-024 タネウヱテ アクレハハユル
マサカキの種を植え、次の年に芽が出るようにします。
28-025 マサカキオ ハコクニミヤニ
はじめ、マサカキをハコクニ宮に
28-026 トコタチノ ウヱテクニナモ
クニトコタチが植えて、国の名を
28-027 ヒタカミノ タカミムスビノ
ヒタカミとし、それをタカミムスビが
28-028 ウヱツキノ フソヒノススノ
植え継ぎました。二十一スズの
28-029 モモヱノチ ヰヨタマキネノ
百枝の後に五代タマキネ尊の娘の
28-030 イサコヒメ ナナヨノカミノ
イサコ姫は七代目の君の
28-031 タカヒトト タカヒノツサノ
タカヒト君とヒタカミの西南の
28-032 ツクバヤマ イサカワハナル
筑波山より流れ出るイサ川の
28-033 ミヤニヰテ ウナツキアミテ
宮で結婚を承諾して
28-034 ギミアヒテ ナモイサナギト
二人は結ばれました。名もイサナギ尊と
28-035 イサナミノ アメフタカミノ
イサナミ尊となり、アメフタカミと言われました。
28-036 ミコナキオ カレタマギネノ
二尊は世継ぎがいなかったので、タマキネ尊が
28-037 カツラキノ ヤマニイノレバ
カツラキの山で祈ると、
28-038 アメミヲヤ ヒノワノミタマ
アメミヲヤが日輪の御魂を
28-039 ワケクタシ アマテルカミオ
分け下して、イサナミ尊はアマテルカミを
28-040 ウミタマフ トキフソヒスス
お生みになりました。それは二十一スズ、
28-041 モフソヰヱ ミソヒキシヱノ
百二十五枝、三十一年、キシエの日の
28-042 ハツヒノデ ワカヒトトモニ
日の出の時でした。若日(初日)と一緒に
28-043 アレマセハ イミナワカヒト
お生まれになったので、諱をワカヒトと名付けました。
28-044 ウブミヤハ ハラミサカオリ
産宮はハラミ山の酒折の宮でした。
28-045 ヲノヱナオ ネニオサムレハ
皇子の胞を北の方角に納めると
28-046 ヨクマモリ ワザハヒアルモ
胞衣は皇子をよく守り、災いがある時でも
28-047 シナカヱテ フセキハラエハ
事態を覆して防ぎ、災いを払い、
28-048 ヤワラギテ タマノヲナガク
災いは鎮まり、皇子は長生きをする
28-049 コレニヨリ オオヤマスミガ
ということで、オオヤマスミ命が
メクリミテ ヨメヂユクネノ
色々な所を探して歩き、胞衣を納めるにふさわしい峰に着いて
【ヨメヂユクネノ】 「ヨメヂ」の語義不詳だが、漢字で「良目路」と読むと、「良目(見た目の良いさま)」の路となる。胞衣を納めるにふさわしい良い場所を探して着いた峰と訳せるのではないか。また「夜目路」と読むと、日が暮れてから北極星を頼りに、胞衣を納める北の方角を見定めたというようにも解釈できる。また少々突飛かもしれないが、長い距離を表す「トメジ」を当てはめて、そのころの距離感での「四(ト)メジもの距離を歩いた」とすることもあり得ないだろうか。
オニオサム ヱナガタケナル"
その尾根に納めました。そこは胞が岳のある
【ヱナガタケ】 長野県の恵那山か。