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カスガカミ フトノトコトオ
我、カスガが伊勢の道の教えを
【フトノトゴト】 「フト」は美称。「ノトコト」は漢字で書けば「宣詞」とでもなろうか。アマテルカミが教えられた「伊勢の道の教え」
28-208 ツカサトルカナ      
説く役割を果たしました。
28-209 ムヨロトシ ヘテコゾツキル
『六万年が経って、去年マサカキが枯れて
28-210 サクスズゾ ムカシカスガニ
サクスズとなった』と昔、我、カスガに
28-211 ミコトノリ フソムノススオ
アマテルカミが言われました。そこで二十六本目のマサカキを
ワレウヱテ ノチノフソヰモ
我が植えました。その後の二十五本も
【ノチノフソイモ】 昔、6万年で寿命が来るマサカキが枯れて、26本目を植え、それから25本植え継ぐと、150万年植え継いだことになる。とんでもない数字である。これまでも大きな数は「長い間」というような解釈をしてきたので、「何年も」とか「長い間」とかいう意味とするが、カスガの話の中の表現としてそのままの数で訳した。
28-213 ミコトノリ ウケメクリウユ
アマテルカミのお言葉を受けて、
28-214 ミヤノマエ キミオワサネバ
宮の前庭に植え継いで来ましたが、もう君は居られないので
イカニセン フタヱガイワク
いかがしたものだろう」とカスガが言った。アメフタヱが
【イカニセン】 アメフタヱに暦の話をして、それから延々とアマテルカミの亡くなるまでの話が続き、ここでカスガの話は終わる。
28-216 カスガトノ イナムミカサモ
「カスガ殿は三蓋宮での魂返しを辞されたけれど、
イマヰセノ ツカフルカミノ
今、仕えている伊勢を継ぐべき君が
【ツカウルカミノ イマスベシ】 「ツカウル」を「継がうる」と読み、「君の位を継ぐべき」と解釈した。
28-218 ヰマスベシ コレコトワリト
いるではありませんか。」と言った。カスガはその通りだと思って
クニメクル モノヌシフレテ
マサカキを探しに国々を巡ることにした。大物主が指示をして
【クニメクル】 タケヒトに仕えることが当然であると気が付いたカスガは、左の臣の役目であるマサカキを植え継ぐべく、その若木を探しに各地を巡った。
28-220 モノノヘラ カスガノカミオ
物部達にカスガを
28-221 ミチヒカス モロカミイハフ
案内させた。多くの臣が祝い
28-222 カトテシテ クニクニメグリ
出発した。国々を巡って
マサカキノ フタヱミヱトヱ
マサカキを探したが、何年探しても
【フタヱミヱトヱ】 「ヱ」をマサカキの枝とすると、「ヒトヱ」が60年なので「フタヱ」は120年、「ミヱ」は180年、「トヱ」は600年となる。「とても長い間」というこの時代の表現と解釈した。また、「ヱ」を実際のマサカキの枝と解釈すると「2枝・3枝から10枝位の若いマサカキ」という解釈もできるのではないか。
28-224 カツテナク イヨニイタレバ
未だに見つからず、伊予まで行った。伊予では
28-225 コトシロガ ヤカタニイレテ
事代主が館に招き入れ、
28-226 アルジトフ ススナエアリヤ
主のイフキヌシ命が尋ねた。「マサカキの苗はありましたか」
28-227 カツテナシ テオムナシクス
「未だに見つかりません。手を尽くしましたが無駄でした」
28-228 モノヌシガ ヲキナウヱンヤ
大物主が「翁(カスガ)が種を植えたらどうですか」
28-229 カスガマタ ワレハトミナリ
カスガがまた「我は臣です。
28-230 キミウユル アマノマサカキ
マサカキの種は君が植えるものだから
28-231 イカニセン ワレハノトコト
どうしようもありません。我は祝詞を
28-232 ノンスノミ マタトフナンヂ
あげるだけしかできません」と言うと、また大物主が聞いた。「汝は
タオスツヤ ホロシテイワク
左の臣の役目を捨ててしまうのですか」カスガは涙を浮かべて言った。
【ホロシテイワク】 「ホロ」が分かりにくいが「涙をホロリと落とす」などという時の「ホロ」と解釈した。
チハステズ ウユオオソレテ
「役目は捨てていません。ただ、自分が植えるのが畏れ多いのです」
【チハステズ】 「チ」を道とし、自分のなすべき道、すなわち役目とした。
マタモトフ イフキカミカヤ
また大物主が聞いた。「イフキカミが植えたらいかがでしょうか」
【イフキカミ】 次の行にある「タナゴ姫」はイフキドヌシの妻。タナゴ姫はイフキカミの母。ということは、イフキカミは2代目イフキドヌシ。
28-236 トキニハハ タナゴヒメアリ
すると、母のタナゴ姫がそばにいて
28-237 コタエイフ ムカシフタカミ
答えた。「昔、二尊が
28-238 ヒノカミオ キミツキハツグ
アマテルカミを君にして、ツキヨミは君の次の位にしました。
28-239 ツグハトミ コノコトミナリ
次の位は臣です。ですからこの子(イフキヌシ)は臣です。
28-240 トミオモテ マダキミトセズ
臣を君とすることは未だかつてないことです。
28-241 ヒノカミノ ツキヱテウユル
アマテルカミを継いで、マサカキを植えることができるのは
28-242 キミハイマ ワカキタケヒト
今は若いタケヒト君だけです。
28-243 オモワネハ アメノムシバミ
そう思わなければ、天下の道理を損ないます。
28-244 ハルルトキ ナエハヱナンヤ
晴れてタケヒト君が即位した時は、マサカキの苗が生えることでしょう」
28-245 アルシトフ サクススハタチ
イフキヌシ命が聞いた。「サクスズになってから二十年経ちましたが
28-246 ノビイカン カレニウセタリ
最後に生えたマサカキの生長はどうですか」「枯れて無くなってしまいました。
28-247 コレモアメ トキニフタヱガ
これも、天の御意志です」とカスガが言った。その時、アメフタヱが
28-248 コヨミナハ イカカナサンヤ
「それでは暦の名前はどうしたらよいでしょう」と聞いた。
28-249 トキニヒメ タラチヲカミニ
タナゴ姫が言った。「父のアマテルカミの
カリイワバ ススキハヨワヒ
言葉を借りて言うと、最後のマサカキの寿命は
【ススキハヨワヒ ハタトセノ…】 「マサカキの寿命は6万年」ということから、ここでは、マサカキの生長する年数もそれぞれあるというように変わってきている。これまでも何年かで枯れたものもあるだろうが、それも「6万年」としたのだろう。
28-251 ハタトセノ ノビモコノキノ
二十年でしたが、生長する年数もこの木の
28-252 アノイノチ カスガモヨワイ
天から授かった命です。カスガは
28-253 ナガケレバ コレナヅクベシ
年長者なので、暦の名前をお付けなさい」
28-254 トキカスガ ヤヤエミイワク
するとカスガはやっと笑顔になって言った。
28-255 コヨミナオ アスストセンヤ
「暦の名はアススとしたらいかがでしょうか」
28-256 トキニヒメ モロカミトモニ
すると、タナゴ姫も臣達も