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38-056 タカヨリガ イムナタカヨシ
タカヨリ姫は諱をタカヨシ、
ナハウチト タケウチマロゾ
名はウチとタケを取り、タケウチマロとした。
【ナハウチト タケウチマロゾ】 「ウチ」はヤマトカゲ姫の父親の「ウヂマロ」から、「タケ」は父親の「ウマシタケヰココロ」からつけた。
38-058 キジトベバ タカヨリノホル
皇子が生まれたとの使者が来たのでタカヨリ姫は宮に上った。
38-059 ウヂマロモ ウチミヤニユキ
ウヂマロも内宮に行き
38-060 コトホギス キミヨロコビテ
祝いの言葉を述べた。君は喜び、
38-061 イムナコフ ウヂマロササグ
ウヂマロに諱をつけるように言ったので、ウヂマロは
38-062 ウヂヒトハ ヨツギミコナリ
ウヂヒトという名を奉げた。ウヂヒトは世継ぎ皇子である。
38-063 ミノウチメ ナルスケウムコ
ヤサカイリ姫は美濃のウチ妃からスケ妃となった。産んだ皇子は
38-064 ヰモキヒコ イムナススキネ
ヰモキヒコ、諱ススキネと
38-065 オシワケト ワカヤマトネト
オシワケ、ワカヤマトネ、
38-066 オオズワケ ツギヌノシヒメ
オオズワケ、ヌノシ姫、
38-067 ヌナキヒメ カノコヨリヒメ
ヌナキ姫、カノコヨリ姫、
38-068 ヰモキヒメ ヰソサキヒコニ
ヰモキ姫、ヰソサキヒコ、
38-069 キビヱヒコ ツギタカギヒメ
キビヱヒコ、タカギ姫、
38-070 オトヒメゾ マタイワツクノ
オト姫である。また、イワツクの
38-071 コノミツハ イラツメミオノ
娘のミツハイラツ姫は三尾の
スケウムコ ヰモノメクスコ
スケ妃で、産んだ子がヰモノ姫クスコ
【ヰモノメクスコ ウチヲキミ】 ヰモノ姫クスコは後に斎宮になる。このことから「ウチヲキミ」は36綾本文094の「ウチノヲミコ」と同義と考える。
38-073 ウチヲキミ マタイソノカミ
内御君である。また、石上の司
38-074 ヰソキネノ ヰカワスケウム
ヰソキネの娘のヰカワはスケ妃で
38-075 カンクシト イナセヒコマタ
カンクシとイナセヒコを産んだ。また、
38-076 アベココト タカタウチウム
アベココトの娘のタカタ姫はウチ妃で
38-077 タケコワケ マタソヲタケガ
タケコワケを産んだ。また、ソヲタケの娘の
38-078 タケヒメハ ソムツキハラミ
タケ姫は十六か月身籠って
38-079 フタゴウム クニコリワケト
双子を産んだ。クニコリワケと
38-080 クニチワケ ツギミヤヂワケ
クニチワケである。次にミヤヂワケと
38-081 トヨトワケ ヒウガミユキニ
トヨトワケを産んだ。君が日向に行幸された時に、
38-082 カミナガガ ヲタネオシモメ
カミナガの娘のオシモ妃のヲタネ姫が
38-083 ウムコノナ ヒウガソツヒコ
産んだ子の名はヒウガソツヒコである。
38-084 マタソヲノ ミハカセウムコ
また、ソヲのミハカセ姫が産んだ子は
38-085 トヨクニノ イムナソヲヒト
トヨクニ、諱ソヲヒトといい、
38-086 ヒウガキミ スメラギノミコ
日向の君である。君の皇子は
38-087 ヲハヰソヰ メハフソムスヘ
男は五十五人、女は二十六人、全部で
38-088 ヤソヒナリ ヲヲウスオヨビ
八十一人である。その中でヲヲウスと
38-089 ヤマトダケ ヰモキイリヒコ
ヤマトタケ、ヰモキイリヒコ、
38-090 ヰモノヒメ ワカタラシヒコ
ヰモノ姫、ワカタラシヒコ、
トヨクワケ ムタリヲミコノ
トヨクワケの六人が御皇子の
【ムタリヲミコノ ナオオブル】 そのほかの皇子が国や県を与えられていることを考えると、「ヲミコ」は皇位継承権を持つ立場ではないか。この中のヰモノ姫は本文299に、アマテル神の斎宮であることが書かれており、「ヲミコ」の立場とされたのであろう。
38-092 ナオオブル アマリナソヰコ
地位に就いた。その他の七十五人の皇子は
38-093 クニアガタ ワケオサムソノ
国や県を分け与えられて治めた。その末裔は
38-094 スエオオシ ソフホハツハル
大勢いる。十二年の初春(一月)
38-095 ミノノクニ カンホネガメノ
美濃の国のカンホネの娘の
38-096 ヱトトオコ クニノイロアリ
ヱトオコ、オトトオコ姉妹は美濃の国の一番の美人だというので
38-097 ヲヲウスオ ヤリテヨバシム
君はヲヲウスを遣いに出して姉妹を呼びに行かせた。
38-098 ヲウスミコ ミノニイタリテ
ところがヲヲウス皇子は美濃に着いて
38-099 スカタミテ ヒソカニメシテ
姉妹の姿を見て気に入ってしまい、秘かに自分の妃にして
38-100 トトマリテ カエコトナサズ
美濃に留まったまま報告もしなかった。
38-101 コトシソヒ タケハヤタナリ
ヲヲウスは今年十一歳で、身の丈は八咫である。
38-102 キミトガメ ミヤコニイレズ
君はそれを咎めてヲヲウスが都に入ることを許さなかった。
アフミヅキ クマソソムキテ
七月、熊襲が叛いて
【クマソ】 「クマ」はクマのアガタ、「ソ」はソの国。この二つを合わせて「クマソ」。現在の熊本県の球磨郡と鹿児島県の曽於の辺りの地域と思われる。
ミツギセズ オシテササゲテ
貢を納めなかった。筑紫から使いが願い状を持って
【オシテ】 いろいろな意味に使われる「オシテ」だが、ここでは君への願いの文書。
38-105 ミカリコフ ハツキモチヨリ
熊襲の討伐を願いに来た。君は八月望の日から
38-106 ミユキナル ナノヰカイタル
行幸された。九月五日に
スハフサバ トキニスメラギ
周防の佐波に到着した。その時君は
【サバ】 山口県周防市に「佐波川」や「佐波」という地名が残っているのでこの辺りと思われる。
サオノゾミ ザガイキタツハ
南の方を望んで「不穏な気配がするのは
【ザガイキ】 「ザ」は「サ」(清い・正しい)が濁音になり、その反対(邪悪な・よくない)の意、「ガ」は「カ」(正しい・明るい)の反対の「邪悪な・暗い」という意と捉え、「イキ」は「息」より「気配」とし、訳は「不穏な気配」とした。