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本来の喜びなのです。男の子を身籠るときは、
【ミナル】 すぐ前の「ハナ」を受けて「実がなる」すなわち身籠ると続けたと解釈した。14綾本文024では「ヨソコノハナニコノミナル」と、世嗣を願う場面で花に実をつける記述があり、その意も含まれているようにも読める。
16-140
日輪の精気が子宮に先に入ってとどまり
御柱に向かって左側にいて
【ミハシラ】 この場合の御柱は、天の御柱が母体に通じていると考えていたのであろう。
メ(月の精気)を招きます。ヲ(日の精気)が先に回りだして
【メオマネキ ヲマヅメクリ】 「メ」は「芽」も表し、この後で「メ」が「ハエイズル」(芽が生える)、すなわち花茎が出てくる、となる。14綾本文108にも同様のことが書かれている。
16-143
メを包みます。メが押し付けられて
16-144
できてくる花茎が陰茎です。
16-145
これが男になる初めです。それで男の子が生まれるのです。
16-146
女の子の場合は、母親の目から受けた
16-147
月の精気が、子宮を潤して
16-148
御柱の反対側にいて、後から入った日輪の精気と
16-149
交わると、メが初めに回り
16-150
オを包むので、オには陰茎ができません。
16-151
股が内側につぼまっていって、
16-152
女の初めになり、女の子が生まれるのです。
女の子は月の巡りなので、日の巡りよりも遅く回り、
【メハツキノ オソクメクレハ】 ここからの数値は女の子を身籠ったときのことで、本文073の数値は、断りがなかったが、男の子を身籠ったときの数値と考えられる。
16-154
呼吸数が一日に三百四十七ずつ増えていきます。
16-155
二十九日目には一万千六十三回になります。
16-156
三十日目には一回減ります。
16-157
三十一日より三十三日までの
16-158
三日間は一日に十九回減ります。
16-159
三十四日目は一回減ります。
全部で五十九回減ります。三十五日目よりまた
【サヅメ】 五十九を表す言葉。19綾(上)本文067の馬の乗り方についてのところで「イヅノリノイソコサヅメ」と、五十九を「サヅメ」といっている。39綾本文303のツヅウタのところで連歌の作法の用語として「イソコツヅサツメ」と使われている。五十九を「サヅメ」と呼ぶ元になるのが、この綾の胎児の成長についてが先か、ツヅウタの作法が先かは判断しかねる。
16-161
一日に三百四十七回増えて
16-162
四十日目には元の数に増えた分を合わせると
二万六千三百七十二回になって
【フヨロムチ ミモナソフ】 私の計算では27007。これも20節同様計算が合わない。
16-164
増えるのは終わります。胞衣の巡りも
16-165
同じようにして、やがて生まれるのです。
16-166
ところがアマテルカミは九十六カ月お腹の中にいました。
わたくしコヤネは百カ月いました。
【マセリ】 「いる、ある」の尊敬語。「コノコヤネ」と言っていることから分かるように、ここの話はコヤネが話しているのにコヤネに尊敬語を使っている。この時代はそれほど厳密ではなかったのか、この文の書き手が尊敬語を使ってしまったのか、いずれかであろう。
16-168
タチカラヲは三十六カ月いました。
16-169
サルタヒコは十六年いましたが、
16-170
これは稀なことです。男の子は一年で、
16-171
女の子は十カ月で生まれます。呼吸数が順調ならば
16-172
出産は楽です』(と姫の殿君が言っていました)」。
16-173
また姫が聞いた。「民は子どもがたくさんいるのに
16-174
宮人には子どもがいないのはどうしてですか」。
16-175
コモリがまた答えた。「セオリツ姫は
16-176
慎み深く、民の仕事にも
16-177
献身的に尽されていますが、
16-178
心が素直でいられ、活力が盛んなので
16-179
子を得ることができたのです。国守などは
16-180
民のために心を尽くしているので
16-181
活力が衰えて子種が少なくなってしまうのです。
16-182
身分の高い人は、身分の低い人がうらやみ、
16-183
思うようにいかないと定めを恨んで
16-184
キミを非難するので、これも仇となって子に恵まれないのです。
16-185
宮中に仕える若い女のすねた様子は
16-186
興ざめです。キミに仕えているコトシロヌシが
忠実に働いていると、これを、仕えている女たちが
【サムメ】 「侍女」と読み、宮中に仕えている女と解釈した。
16-188
うらやみます。君の恩恵も
16-189
つい忘れてしまい、恨んだり妬んだりします。
16-190
大内宮の庭の桜が咲かなければ、このようなことがあると思ってください。